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タラブックスの本

昨日は奈良県立図書情報館へ「タラブックスの本づくりを語る」という矢萩多聞さんのトークを聞きに行った。
こちらでは「タラブックス展」が開催中。(12/27まで)
http://www.library.pref.nara.jp/gallery/2825

(こんな図書館がそばにあったら幸せだなぁ!洗練された建物、最新の設備、利用者が居心地よさそうで雰囲気がよい。そしてカフェのコーヒーとパンもおいしい)

タラブックスのことはよく耳にしていたし、写真などで作品も目にしていたが、
実際にハンドメイド版のタラブックスの本を手にしたのは初めて。

手漉きだという紙の手触り、シルクスクリーンの少し盛り上がったようなプリント、その色彩….
描かれているモチーフや物語のことはひとまず置いておいて、
物体としての本の存在感と豊かさに驚いてしまった。
手元に置いて、繰り返し眺めたり触ったりしたくなる。

トークでは、こんなすばらしい本を生み出しているタラブックスがどんな会社なのか、
どんな人たちが働いているのか、実際にどういった工程で本がつくられているのか、などをお聞きする。

印象に残ったのは、タラブックスの社員を大切にする姿勢。
いくら本が売れても、社員の数を倍にしたり、残業をして本をつくるのではなく、顧客に刷り上るまで「待ってもらう」という考えかた。
独立していった社員にもいつまでもやさしい。仕事をまわしたり、子どもの学費を払ってあげたりする。
社員全員で要望や不満などを話し合える機会を月に一度もうける。(ここでジムに行きたいという要望があがり、屋上に私設ジムができた!)
世界中の人に会社見学に来てほしいと思うのは、注目されていると知ることで、社員が自分の仕事に誇りを持てるから、など。

よいものは、幸せな人と場所から生まれる、そんな言葉が浮かんだ。

しかし、タラブックスが扱うモチーフや物語は決してやさしく甘いものではない。
少数民族が伝える絵の手法や、受け継がれてきた物語のバックグラウンドには、
差別されてきた歴史や、厳しい自然の中でなんとか生きてきた人々の営みがある。

タラブックスの本の一つに、
差別を受け寺院に入ることが許されなかった人々が、布に女神をプリントして、自分の祭壇とした、
そのための美しい布を題材としたものがあった。
アールブリュットの作品に触れたときのように、切実さが生み出す美しさにしばらく見入ってしまった。

会期中この後12月1日には、タラブックスのドキュメンタリー(40分)の上映もあるとのこと。
この日のトークイベントののテーマは、絵本『つなみ』ができるまで。
さっそく予約をして帰ってきた。

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